日銀ETF売却「100年計画」の全体像──購入資金・含み益・売却先を整理する

2026年2月4日水曜日

ETF 日銀

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日銀が保有ETFを売却へ──その仕組みと行方を整理する

2026年に入り、日本銀行が長年保有してきたETF(上場投資信託)を、市場を壊さないペースで売却し始めたことが報じられた。しかも、その期間は「100年単位」。

そもそも、なぜ日銀はETFを大量に持っているのか。購入資金はどこから出たのか。そして売却によって得られるお金は、最終的にどこへ行くのか。

本稿では、日銀ETF問題を制度・会計・金融政策の視点から、できるだけ噛み砕いて整理してみたい。


1. 日銀はETFの購入代金をどうやって工面してきたのか?

結論から言えば、税金でも国債発行でもない

日銀によるETF購入は、いわゆる「量的・質的金融緩和」の一環として行われてきた。仕組みはシンプルで、日銀が市中銀行などからETFを買い取る際、代金として日銀当座預金を新たに増やす

中央銀行である日銀は、民間と同じ意味での「資金調達制約」を持たない。ETFを買うと同時に、

  • 資産:ETF

  • 負債:日銀当座預金

が同時に増える。いわばバランスシートを拡張することで市場に資金を供給してきたわけだ。

これは国債買い入れと同じ構造であり、政府予算とは直接関係しない。日銀のETF購入は、あくまで金融政策上の市場操作だった。


2. 日銀が保有するETFの簿価と含み益

では、日銀はどれほどのETFを保有しているのか。

2026年初時点で公表されているデータを基にすると、

  • 簿価(取得原価ベース):約37兆円

とされている。一方、株価水準の上昇を反映した時価評価額は、

  • 約80兆円前後

と推計されることが多い。

単純計算すれば、

含み益は40兆円超

という、民間企業では考えにくい規模になる。

もちろん、ETFは日々価格が変動するため正確な数字は固定できない。しかし、「日銀は含み損を抱えて身動きが取れない」というかつての懸念は、少なくとも現時点では当てはまらない。


3. ETF売却はいつ決まったのか?

日銀がETF売却方針を正式に決定したのは、

2025年9月19日の金融政策決定会合である。

この会合で日銀は、

  • 保有するETF・J-REITを市場で売却していく

  • 市場への影響を極小化するため、極めて緩やかなペースとする

ことを全員一致で決定した。

売却ペースは、

  • 年間簿価ベースで約3,300億円程度

とされ、単純計算では完了まで数十年、実質的には「100年単位」の長期プロジェクトとなる。

2026年1月には、象徴的とも言えるごく少額の売却が実際に始まった。


4. ETFを売って得たお金はどこへ行くのか?

ここが最も誤解されやすいポイントだ。

ETFを売却すると、買い手から支払われた資金が日銀に戻る。これにより、

  • 日銀のETF資産は減少

  • 現金(当座預金決済を通じた資金)は増加

というバランスシートの縮小が起きる。

重要なのは、

このお金がそのまま政府の財源になるわけではない

という点だ。

売却益や損失はまず日銀の損益計算書に反映される。その後、

  • 日銀の利益が確定

  • 一定額が**国庫納付金(政府への配当)**として支払われる

というプロセスを経る。

つまり、ETF売却は「埋蔵金の放出」ではなく、中央銀行の資産整理と金融政策正常化の一環なのである。


おわりに──異例の政策の後始末として

日銀によるETF大量保有は、世界的にも極めて異例の金融政策だった。その後始末もまた、前例のないものになる。

市場を壊さないために100年かけて売る──それは逃げでも先送りでもなく、

自ら歪めた市場と、最後まで付き合うという覚悟

の表れとも言える。

ETF売却は派手なニュースになりにくい。しかし、日本の金融政策が「異常」から「平常」へ戻る過程を映す、静かな指標であることは間違いない。


参考記事・資料


執筆者:pablo
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